豊穣たる熟女たち
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豊穣たる熟女たちとの忘年会

前の職場の連中が忘年会に招いてくれた。メンバーはこの四月に本所吾妻橋の稲垣に集まった熟女たちに加え、所長のS子。筆者を含め総勢七人、場所は前回同様稲垣だ。いまだに仲間として待遇してくれるのは、やはりうれしい。

さて職場がひけて新宿三丁目の駅から地下鉄に乗った筆者は、申し合わせどおり岩本町の駅のホームで合流し、馬喰横山駅で下りて浅草線に乗り換え、本所吾妻橋で下車した。その途中熟女らは筆者のあとをぞろぞろとついて来る。そのさまがあひるの雛のようだ。

おっとどっこい、筆がすべった。先日はカササギなどと書いて、彼女らの叱責をかったばかりというのに。みなさん、優雅な熟女にみえますよ。

お膳を囲んで席に着くや、熟女たちの顔を改めて眺め渡す。みなうっすらと赤みを帯びた表情が元気そうに見える。今日も一日体をつかって仕事をしたのだから、さぞかし腹も減っているだろう。さっそくこの店自慢の餃子鍋を食いながら、うまいビールを飲もう。

というわけで、和気藹々、遠慮のない宴会が始まった。この忘年会は筆者の後任のS子を囲んで始めての宴会になるので、遅まきながらS子の歓迎会を兼ねさせていただきます、それに今日は偶々わたしとY女の誕生日に当たってますので、わたしたちの誕生日祝いも兼ねさせていただきますと、T女がいう。そうか、そういうことだったのか、ともあれ仲間に入れてくれてうれしいよ。

話題は自然、彼女らの職場のことが中心になる。筆者が去ってからまだ半年にしかならないが、従業員の顔ぶれは結構変わっているようだ。特に男の定着率が相変わらず悪いという。体を使う仕事なので、男の不器用さが適応を妨げるのかと思ったりする。それに比べれば女の方は、六十を過ぎても元気溌剌としたものが多い。

そんな中でこの熟女たちは、職場のキーパーソンとして、毎日がんばっている様子が頼もしい。筆者の後任のS子は、筆者より一回り以上若いが、熟女たちに助けられて快適に仕事をしているようだ。

筆者の今の職場は男ばかりの殺風景な所帯、仕事をするにもメリハリに欠ける。やはり集団というものは、老若男女多彩な人々からなっているのが理想だ。

ついで最近食ったグルメが話題になる。兄弟事業所との合同忘年会は、去年と同じく御茶ノ水のジュラクでやったけど、今年は量が少ない代わりに刺身が出たりして去年よりよかったわ、去年は肉料理ばかり大量に出てきて、わたしたちの口にはあわなかったもの、やはり料理は和風が一番よ。

するとM女が、去年は宴会の後で男の従業員につきまとわれて、あやうくひどいセクハラを受けそうになったわ、などと物騒なことを言い出した。酔いつぶれたうえ、女性にからむのはよくないね。でも男に絡まれるのは、まだ若くてきれいだと思われてる証拠かもしれないよ、と慰める。

筆者の職場の忘年会は両国でチャンコを食ったよといったら、わたしたちも是非食べてみたいわ、今度このメンバーで宴会をやるときは、チャンコにしましょうよ、などとT女がいう。

鍋の中身を食い進んだところで、この中にうどんを入れて食べようということになった。この店はすこしばかり注文がはみ出しても、けちなことはいわないから、好きなだけ注文したらよい。すると店のほうでは、餃子鍋にはうどんより中華麺の方があいますよといってくれた。なるほど変わった味がして結構いける。

こんな具合でわいわいやっているうち、あっという間に三時間が過ぎた。豊穣たる熟女のみなさん、今夜も楽しく過ごすことができました。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2012
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